加入金の性格と定款記載について
当組合の定款には、脱退者の持分の払戻しについては、「組合員の本組合に対する出資額を限度とする」旨の規定をしている。定款参考例によれば、このように規定している組合では加入者からの加入金を徴収する旨の規定は削除することとされている。加入金は定款の定めがなければ徴収できないということであるので、このことにより、当組合で、加入金は徴収できないと考えられる。
加入の際の事務手数料的なものを徴収することはできないのか。この場合、定款に「加入金」ではなく、「加入事務手数料」を徴収できる旨の規定を置くことはできるか。
中協法では、組合が定款で定めた場合には加入金を徴収することを認めている(第15条、第33条)が、この加入金の意味については、特に規定していない。しかし、その趣旨から広義に解釈すれば、持分調整金と加入事務手数料を意味するものと考えられる。
持分調整金とは、持分の算定方法について、改算式算定方法(組合の正味財産の価額を出資総口数で除して、出資1口当たりの持分額を算定する方法。したがって組合員の持分は均一となる)を採っている場合において、組合財産の増加によって出資1口当たりの持分額が出資1口金額を超えている場合に、その超過した部分に当たる差額を新規加入者より徴収し、新規加入者と既存組合員との持分についての公平を保とうとするものである。
このように、持分調整金は、改算式の持分算定方法を採用する組合において徴収することになるが、たとえ改算式を採っている組合でも、貴組合のように、定款の規定により脱退者の持分の払戻しが「出資額を限度」として行われる組合にあっては、常に払戻額が出資額を上回ることはなく、新旧組合員の持分の調整を行う必要が生じないので、持分調整金としての加入金をとることはできないとされている。定款参考例でいう「加入金」は、この持分調整金を意味していると解されるので、このような組合にあっては加入金の項を削除するよう指導されている。
次に、加入事務手数料についてであるが、これは組合に加入する際に要する事務的費用、例えば出資証券や組合員証の発行費用などであるが、これを加入者に負担させるために徴収するものをいう。この加入事務手数料は、広く加入金の一種と考えられるが、これはあくまで実費の範囲を超えないものであり、その性質上それほど多額なものとなり得ないものである。このような実質的なものの徴収は、加入金の規定によらなくても組合として徴収し得るものである。
しかし、このことは、加入事務手数料を徴収できる旨の定款記載を禁じるものでなく、例えば徴収の根拠を明らかにしておく等の必要がある場合には、この旨を掲載しても差し支えないと考えられる。
(※)持分の算定方法には、前記の改算式算定方法のほかに、加算式算定方法がある。(「持分の算定方法について」参照)