決算書類に添付する監事の監査意見書について
通常総会で決算関係書類(事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、剰余金処分案又は損失処理案)の承認を求めるに際し、理事は監事の意見書を添えて総会に提出しなければならないことになっている。監事に次のようなことがある場合、どのように処置したらよいか。
1.監事が複数人いる場合、決算関係書類に添付する監査意見書の監事の意見は必ず一致しなければならないか。組合の決算書をみると、1通の意見書を監事が連名で出している例が多く見受けられる。
2.監事全員が監査意見書の提出を拒んだ場合に、監事の意見書がないまま総会を開催し、決算関係書類の承認を受けることはできるか。
また、監事の定数が1名の場合、その監事が病気等で監査をしてもらえないときはどうか。
監事は、会計監査を通じて理事の業務執行を監督する立場にある機関である。監事には会計帳簿及び書類の閲覧、会計に関する報告徴収、組合の業務及び財産の状況を調査する権限が与えられており、それらの権限に基づいて、監事は各々が独立して監査業務全般を行う。
1.複数の監事がいる場合、監査結果について監事すべての意見が常に一致するとは限らないし、その必要性もない。たとえ監事が複数存在するとしても、監事は合議機関ではなく、各監事はそれぞれが独立して監査業務全般を行うものだからである。
重要な部分について監事間に意見の相違がある場合に、その点を監査意見書で明らかにすることは、各監事の責任を明確にするばかりでなく、組合員に対して問題点について注意を促すという意味においても意義がある。
前述のように、監事は各々が独立して監査業務全般を行うから、監査意見書は、各監事が各別に作成すべきものである。
組合では通常、複数の監事が共同して監査を行い、連名で同一文言の監査意見書を作成することが多いと思われる。しかし、法律的には、監事の合議によって一個の監査意見書が作成された訳ではなく、同一内容の複数の監査意見書が作成されたものと解される。各自の意見書の内容が同一であるので形式を連盟にしたにすぎないのである。
2.理事は、監事の意見書を添えて決算関係書類を通常総会に提出しなければならない。しかし、監事が意見書の提出を拒んだ場合は、これを強制的に履行させる方法はない。また、監事の監査がない状態で決算関係書類を承認する総会の決議がなされた場合は、その決議は取消原因を有することになるものと解される。
監事全員が意見書の提出を拒んだ場合は、煩瑣でも、監事を解任し、新たな監事を選んだうえで、新しい監事の監査を経て再度総会を開催しなければならない。監査意見書の提出を拒む監事の行為は、法令・定款違反(任務懈怠)に当たる。
監事の定数が1人であり、その監事が病気等で執務不能になった場合は、監査を行うものが1人もいなくなる。他に監査を行う監事が必要になるが、定款に定める監事の定数の欠員ではないので、そのままの状態で新たに監事を選任することもできない。
この場合はその監事に辞任してもらうか、辞任に応じてもらえなければ解任の手続きをとって退任させ、総会を開いて新たに監事を選任して、後任の監査を待って改めて通常総会を開くほかはない。