指名推選により当選した当選人が理事就任を辞退した場合の効力について
当組合では、先に開催した通常総会において、指名推選の方法により役員選挙を行ったが、総会終了後、当選理事18人のうち4人が理事就任を辞退した。当組合の理事定数は、定款により「15人以上18人以内」となっているので、この4人の就任辞退者が出た結果、理事就任者が理事の定数の下限を下回ることになってしまった。指名推選の方法をとる場合は、被指名人を区分して行ってはならないと聞いたが、当組合の場合は、再度理事全員について選挙し直すべきであろうか。又は,辞退した4人分についてのみ選挙すればよいのか。
指名推選制は、役員選挙について、最も民主的であるべき無記名投票制の例外として設けられている制度であるから、その方法の実施に際しては、法律上、①総会の出席者中に異議がない場合に限り、この方法の採用が認められること(中協法第35条第10項)、②当選人の決定について、出席者全員の同意を必要とすること(同条第11項)、③2人以上の理事又は監事を選挙する場合において、被指名人を区分してこの方法を用いてはならないこと(同条第12項)の3つの厳しい要件が課されている。法がこのような要件を課しているのは、多数派が少数派を排除することによって理事又は監事の構成が多数派に偏することを防止するためである。
質問は、指名推選の方法により理事の定数の全員を選挙したにもかかわらず、その後一部当選人の就任辞退により、理事数に不足が生じたため、再度役員選挙を行う場合において、先の役員選挙における当選人の当選を有効なものと認めてよいかというものである。
これには、2つの見解があり、1つは、そもそもこのような理事数の不足は、定数の全員が選挙され、当選人が確定した後に生じたものであるから、当選人の当選は有効であるとする見解である。ちなみに投票によって選挙された場合におけるこのようなケースについては、この考え方により、当選人の当選は有効であると解されており、したがって理事数の不足分については、繰上当選の定めがあれば次点者を当選人とし、繰上当選の定めがないときは、就任辞退による不足数につき再度選挙すればよいこととされている。
いま1つの見解は、指名推選制が、前述のように、投票による選挙方法の例外として設けられ、その実施に際しては特に厳しい要件が課されている点を重視し、就任辞退者分のみの選挙は、多数派による少数派の排除の防止を目的とする法の趣旨に反する結果を招く恐れがあるとして、指名推選の方法をとる場合においては、当選人の当選を無効とし、改めて全員について選挙し直すべきであるとするものである。
しかし、質問のようなケースにおいては、前者の見解のように、当選人の当選は有効であると解すべきであり、また、指名推選制に課された要件の中の「被指名人を区分してこの方法を用いてはならない」とする規定については、あくまで1つの選挙行為について指名推選の区分適用を禁止する趣旨のものであって、選挙行為が終了した後に、既に就任を承諾した当選人の当選を無効とし、再度全員について選挙し直すことまでも求める趣旨のものではないと解される。
したがって、貴組合の場合は、就任辞退により不足が生じた4人の理事を補充するための選挙を行うことになる。